統合保育事例インタビュー | おひさま保育園:伊藤美和園長

INTERVIEW 01

療育室つばさと統合保育をしようと思ったキッカケは?

(以下、おひさま保育園・伊藤美和園長談)
近所に療育室つばさがあり、声をかけてもらいました。
以前から足立区新田地域につばさという施設があり、保育園と交流を行っているとは聞いていました。

当園では発達支援児を受けいれており、発達支援児のお母さんが保育園を探して「保育園で色々刺激を受けて欲しい」とおひさま保育園の門を叩かれることもあったのですが、受け入れ体制も充分ではなく、思うところがありました。そんな中でつばさからのお話だったので、これは通じるところがあると。

元々職員には機会があれば障がい児保育に関する研修を受けてもらっていて、心身障がい的への対応の仕方を専門的に学んだわけでは無いですが、つばささんとの交流は職員の学びにもなるのではと思いましたね。実際には統合保育といっても特にお構いはせず、放置と言うと聞こえは悪いですが、障がい児と保育園の子どもたちが互いに楽しんでくれればという気持ちでした。発達支援児さんにも対応しなきゃ!という義務感も多少はありましたが、まずは明るいあったかい空気をみんなで吸いながら楽しんでいけたら、と思っていました。

統合保育をはじめるにあたって職員に話したことは、「子どもたちが自分とは違うところがあると感じることがあっても、それで構わない。いつも遊びに来てくれる仲間が増えたと思ってもらえるように」ということです。これが交流を決めた経緯、はじめたキッカケということになりますね。

Q. 統合保育を行う中での子ども達の反応、変化について教えてください。

一番の目的は、「何か子ども達に変化を起こしたい」といった大きな目的ではなく、障がいの有無に関係なく、ご近所で仲良く楽しめればということでした。職員にも「どういう状態のお子さんかに関係なく一緒に過ごしてもらおう!」と伝えて、子ども達にも特に大袈裟な導入などはしませんでした。同じ場で過ごす!特に前ふりはなく、また来たね、楽しかったね、で良いかなと。友だちってそういうものですよね。

子ども達は素直なので、「何でチューブがあるの?」なんて聞いたりするが、つばさの職員さんが上手に自然に説明して、子ども達もふーん、そうなんだ、で終わる。だから気をつけようね、と気負うこともなく一緒の場にいられる。何も難しいことはありませんでした。子ども達もごく自然に関わりが出来たようです。回数を重ねると「また来てくれた」という気持ちになる。これが統合保育の入り口ではないでしょうか。特に企画することなく、自然に交流する場が出来たのが良かったと思います。同じ地域で、分け隔てなく身構えもせず育てる。つばささんが来る前に部屋を綺麗にするなども無かったです(笑)。

Q. 先生たちの反応について教えてください。

先生たちは医療ケアにあまり戸惑いはありませんでした。私(園長)がどんどん触っていたこともあったかも知れません。職員室のボードに「つばさ来る」と書いて、職員も「はーい」という感じ。職員達も全くいやな顔はせず、じゃあ外行こう、何しようと企画してくれたので良かったです。

毎回来ると、先生達というより子ども達がまた来たよねーと喜んで話していた。顔見知りになった子どもは、また寝ちゃったね、今日は機嫌が悪いね、という発見もありました。

そうそう、初めて来たときに、お土産でお菓子を用意していたのですが、「食べられないです」と言われたことはありました。それぐらいかな。でもそこでも戸惑いは感じず、「じゃあ先生達でどうぞ」となりました。園児が相手に素直に色々言ってしまうのではないか、という不安はあったが、結構子ども達はすんなり受け入れてくれて。自然に素直に、何も考えずに楽しく過ごしてくれたのが嬉しかったですね。子どもの感じ方が人それぞれ違うのは当たり前だから、それで良いんじゃないかと思います。

Q. 保護者の方々の反応について教えてください。

もちろん保護者の方にも事前に統合保育活動について説明はしましたが、特に戸惑いなどは出なかったです。ホームページでお知らせしてもお褒めの言葉をいただくことが多かったですね。保護者も受け入れ方が素直で、最初にあれこれ心配するよりも意外と心が広い方が多いものです。

Q. 統合保育を行う中で、なにか記憶に残ったエピソードはありますか?

近隣なので、統合保育で来ていた男児とよく町ですれ違うんですよ。成長が見られて会うとうれしくなりますね。職員室で必ず「見た」と会話になります。おひさま保育園では土曜日に不定期で子育て広場を行っているのですが、その際に見学に来ていた父兄にも、「すばらしい取り組みですね、先生」と声をかけられました。

Q. 今後、FLAP YARDに期待することがあれば教えてください。

矢部さん(註:FLAP YARD施設長)がアピールが上手なので、明るく地域に宣伝、アピールしていけたら良いんじゃないでしょうか。暗い感じが一切なくて、見ていて楽しいです。「大変なんです」ではなく、明るく楽しく、知られていく。統合保育においてはそれが何より大切なのではと思います。
あとは、先生方がどうかわかりませんが、発達支援児の親御さんは「大丈夫ですか?」と思うほど疲れた感じで皆さんいらっしゃるんです。本当にこの保育施設で預かって欲しいと、お母さんが切羽詰まっていらっしゃるので、FLAP YARDのような取り組みや施設がもっと増えればと思います。

FLAP YARDの力で、お母さん達を明るくしていって欲しい。子どもだけが交流するのではなく、保護者の方たちも広く関わって、一息ついて、気持ちをリフレッシュして欲しいと思いますね。気持ちに余裕を持って綺麗に、溌溂に。すると子どもも変わっていく。中ばっかりでなく、親御さんもほっと心が癒されることがあって良いのではないか。そんな時間や雰囲気を作っていくのが統合保育の役割ではないかと考えています。

保育園の先生たちの意見を紹介します。

・すごく、貴重な体験。これが貴重な体験ではなく、普通になるのが一番だが。一緒に遊ぶのは良い体験。土曜日に遊びに来ていたので、引っ越してから「今日はつばささんは来ないの?」と聞いてくれる子がいた。来てくれるのを楽しみにしていた。

・大人になってからだと理解が中々難しい。こういう小さいうちから一緒に活動、楽しい活動をさせてもらえることで、子ども達に貴重な経験を 子どもの幅も広がる。

・近所も仲がいいので、近所の人もつばさを知らず、「そんなところがあるの?どこ」と聞いてきたりする。保育園でつばさを知らしていけたら。子ども達も自然にフォローしながら。気を使いすぎない。普通に接する。個別の配慮はするけど特別扱いはしない。みんなそれぞれ個性がある。出来ないで困っていればごく自然に助け合える。優しくなれるところも素良い。

おひさま保育園ホームページ( http://ohisama.taiyokai.jp/ )